近年、中国からの訪日旅行者は急速に個人旅行化が進展している。特に都市部にその傾向が顕著に現れている。在上海日本国総領事館の発給する査証件数においても、昨年は団体観光と個人観光の割合が約半数であったところ、今年は個人観光が6割を超える状況となっている。この個人旅行化の傾向は、今後さらに沿岸部、内陸部へと進展していくことが想定される。
では、個人旅行を計画する際に、中国人は何を情報源とし、参考としているのだろうか。中国はよく「口コミ」社会と言われるが、旅行においても同様である。インターネット上の口コミサイトや、友人、知人とやり取りをするソーシャルメディアが重要な情報源となっている。
実は中国は日本よりデジタル環境が進んでおり、スマートフォン普及率は9割を超え(日本は5割強)、ネットユーザー約7億人のうち、その9割がモバイルからアクセスしている、超デジタル社会である。
このソーシャルメディアの代表格と言えるのが中国版LINE「微信(WeChat)」だ。この「微信」は約6億人のアクティブユーザーを抱える国民的メディアであり、人気機能「朋友圏」では1日30億通の情報が友人間で共有され、旅行時に撮影した写真や動画もその場で頻繁にアップされている。そのため、中国人を受け入れたい施設は無料Wi―Fiを完備することでその宣伝効果は格段とアップする。
この「微信」はどれほどの拡散効果があるかというと、1ユーザー当たりのフォロワー数は約半数の人が100人以上であり、また1日のうち半数以上が20回以上アクセスしている。今や「微信」は中国人にとって一般的なコミュニケーション手段として定着しており、重要な口コミ情報源となっている。
また、個人旅行を計画する際に良く閲覧されるのが、「旅行攻略サイト」である。実際に旅行した人が自身の旅行体験記や最適なプランの情報などを投稿する口コミサイトで、「蚂蜂窝MaFengWo」や「穷游网QiongYou」が代表的である。このサイトに投稿数の多い観光地や施設は、人気の観光スポットと言える。
効率的な移動手段や所要時間をはじめ、途中で見つけたお薦めの食事場所やお土産情報などが掲載されており、限られた時間を有効的に使いたい個人観光客は、このサイトでじっくりと旅行計画を練って、行程を組んでいる。ぜひ一度、ご自身の関係する観光地や施設を検索してみていただければと思う。
もしも、このサイトに何も書き込みがない場合、中国人スタッフにカメラを持たせ、施設のPR記事や正しい情報(定休日、営業時間、観光情報など)をきれいな写真と一緒に中国語簡体字で投稿することも一つのアイデアとしてご提案したい。
このように、個人旅行化が進む中国人旅行者を誘客する鍵はいかにデジタルを駆使して情報を発信し、知名度を上げるかであり、最も効果的なプロモーションであると言える。